アクト・グローバリー
ここのところ、秋雨前線の影響で、我が家の周りでは急に気温が下がった。それも最高気温でも25度というから、最高気温で40度越えをした日から計算するといっきに15度近く気温が下がったことになる。
こうなるともう、出かけるとなると短パンは場違いで、Tシャツも長袖でだいじょうぶという状態である。二週間後に出かけるNYでも最高気温がこのくらいというから、そういう意味では持っていく衣類のシミュレーションになっていいのだけれど、それにしても極端じゃないだろうか。例えば冬場にいっきに15度気温が下がったりしたら天変地異ではないか。
それはともかく、涼しくなると温かいコーヒーが飲みたくなる、というもので、奥さんと連れ立って群馬県の内奥へと(群馬県自体が内奥だけど)ドライブがてら「古民家カフェ」を詣でに行ってきた。どうでもいい話だけど、移動中のBGMはひたすらローリング・ストーンズを聴いていった(ベスト盤と最近のアルバム3枚)。
京都に住んでいた時分には「古民家カフェ」なんてのは珍しくもなんともなかったけれど(いや、それどころかメインストリームのひとつであった)、北関東となると話は別である。そもそも「カフェ」自体見つけることがすごく難しい。これは、夫婦揃ってカフェ・マニアの都並夫妻には厳しい状況、と言えなくもない。
そんな中で、インターネットでよさげな感じのお店を見つけたので、片道結局1時間半かかったのだけど、がんばって行ってきた。
ちなみに都並のブログを読んで下さっているある方は、奄美大島でいい感じのカフェに出かけるのに片道2時間かけて行く、とおっしゃっていたことがあるが、いわばそれと同じ行動パターンである。いや、いいものやいい時間に出会うためには、対価となる時間を差し出すことをためらっていてはいけないのだ。
などと能書きはおいておいて、このカフェ、いや珈琲専門店、結論から言うと「感服」するくらいのすごい店だった。正直まいりました。関西のみならず関東、札幌、名古屋、広島、はては愛媛までいろいろなところでカフェに行ったけど、軽く全国区レヴェルに達しているお店でした。のでここに記しておきます。
お店の名前は「伊東屋珈琲」さん。サイトによれば、もともとオーナー御夫婦が千葉県流山市でお店をやってらっしゃったのを、奥様の方のご実家がある群馬県桐生市に戻ってきて、店舗兼住居として始められたという。
その際、既存の店舗や家屋を探すのではなく、感じのいい古民家をよそで見つけて、それを移築してきてから始められたというから、その初動のエネルギー値に頭が下がる。
画像は店内の写真だけれど、その古民家の空間にフランスなどのアンティークの家具がマッチして、本当に居心地のいい空間を作っているのがわかると思う(画面中央奥に鎮座ましましているのは、豆を炒る機械のよう)。
僕らはこの、なつかしい居心地のよさ(関西に住んでいた時にはほんとうにいい感じのお店がいっぱいあったのだけれど、思えば恵まれていたのだなあ)にほだされて、ついつい一時間以上も長居してしまった。秋雨のちらつく昼下がり、店内には時々涼しい風が流れ込んできて、しんと静まり返った時間を作り出している。
オーナー夫妻のエネルギーはもちろん、コーヒー豆へのこだわりにも反映されている。店内の掲示によれば、東京で開かれるメッセや見本市に出店するだけにとどまらず、パナマなどのコーヒー農園へ現地視察にも出かけているというからもう、ふつうのカフェとはぜんぜん格が違うのだ。
そのこだわりを反映しているであろうメニューの中から、僕が選んだのはいわゆる「本日のコーヒー」(正式なメニュー名は忘れました。ごめんなさい)。この日の豆はパナマ。ポットサービスで390円。たっぷりゆっくりコーヒーが楽しめるのがありがたい。
その一杯めを注いでもらって、まず香りをかぐ。この香りがすばらしかった。なんというか、強烈にノスタルジーを感じさせる匂いだった。中学生くらいの自分、母親を真似してコーヒーを飲み始めた時の記憶を思い起こさせるというか。
そのノスタルジーに浸りながら一口目をすする。「ああ、本来日本人のコーヒーってこうだったんだな」という滑らかでまろやかな味が広がる。苦味は控えめで、へんなたとえだけど、口の中で溶けるような味わいがある。もちろん、ポットサービスだから一杯めは薄く出してもらっている。それが二杯、三杯と飲むのにしたがって、だんだんしっかりしたコクと苦味が出てくる。
この苦味がまた、水彩画的な苦味というか、角が取れた苦味でおいしかった。いかにふだん自分がスターバックスのシャープな味に馴らされているか、いかにスターバックスのコーヒーがマッチョな味なのかを思い知った。絵画に喩えると、スターバックスはシルクスクリーンである。
ついでにパウンドケーキも頼む。こちらもお店の手作りメニュー。表面のアイシングの下に、マーマレード的な柑橘が乗っかっていて、しっかり甘いけれどくどくはない。コーヒーによく合う。
写真はないけど、奥さんが頼んだのはブルーベリーのチーズケーキ。こちらは甘さ控えめで、チーズの本格的なコクが前面に出された大人っぽい味。どちらもおいしかった。
あまりに感激したので、お店の豆を二種類ほど、250グラムずつ買ってきた。ついでにお店のオリジナルの保存用缶も。こちらもかわいいデザインなのだがあいにく画像はありません。すいません。
この「伊東屋珈琲」さん、豆の通販もしているというから、ちょっと今後もお世話になりたいお店である。片道1時間半は長いといえば長いけど、それでもえっちらおっちら出かけよう、と思う。
いやはや、どこにでもこういう突き抜けたお店というのはあって、片田舎でも世界に視野を広げて活動しているんだなあ、と感激した一日だった。





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