帰還

1214529173_246気がつけば、いや自分でもわかっていたんだけれど、約二ヶ月間このブログを放置していました。

その理由はというと、何せ忙しかったのです。

誇張ではなく、この3ヶ月間というもの、寝ている時間(たぶん、一般人の平均より睡眠時間は長いけれど)以外は常に何か「仕事」をしている、という状態で、これは僕みたいな、もとがマイペースかつ牧歌的な人間には、とってもきついことでした。

僕は、できれば毎日笛を吹いたり羊と遊んだり、歌を歌ったり釣りをしたりして過ごしたい、そしてできればきれいな夕焼け雲や砂浜の貝殻や木々の梢の葉のかたちを、まるで初めてこの世界で出会った美のように、はっという驚きをもって愛でつつ暮らしていきたい、という「走れメロス」かムーミン谷のスナフキンみたいな人間なのです。

それがこの3ヶ月というもの、人が違ったように働いています。いやはやまったく、とんでもないことだ。「若い頃に無駄に過ごした時間が、人生で唯一の自由であるかもしれない」という名言がありますが、何となくこの言葉の重みが理解できる今日この頃です。

しかしこれから先、直ちにこのワーカホリックなスタイルを改善できそうな見込みもないので、これと折り合いをつけていかなければならないんだろう。ひとかどの人間になりたい、とは思わなくても、せめて人並みでいたい、と思ったら引き受けなくてはならないことなんだろう。

…などと繰言を言っても仕方ないので話題を変えて。

この忙しさの中で、父親になりました。

6月7日、晴れ渡る五月晴れ(6月だけど)の日に、娘を授かりました。

これは、当然のことながら、僕の人生観というか世界観にとって大きな衝撃で、彼女の存在は、その誕生の直後から、我が目で眺める世界の意味合いを完全に変えてしまいました。

この、まずまずありきたりな人間に起こったまずまずありきたりな事件が、これもまたありきたりな感じで当事者に及ぼすインパクトというものが、ありきたりであるがゆえにそれだけいっそうものすごすぎて、それがしばらく日記に向かえなかった理由でもあります。

このありきたりな衝撃をどう伝えればいいのか、うまく表す言葉がないのですが、それでもよく覚えていることを書いておきたいと思います(きっとそれもありきたりな文章になるだろうけど)。

6月7日、朝方に娘が生まれて、僕と奥さんは産院の個室に帰ってきて、まだ娘は新生児室にいるので、仮眠をとろうとしていたときのことでした。

この日の空は、先ほども書いたように清々しく晴れていて、部屋の窓からは故郷の田んぼの青々とした苗が一面に広がり、それが風に波打つのが見えました。窓を網戸にすると、その田んぼの上を吹き渡った風は、僕らのいる部屋の中にも入ってきました。

そこで僕は部屋のソファー・ベッドに寝っ転がって、エアコンなんかつけずに、このなじみのある、故郷の町の春の風に吹かれながら、仮眠を取ろうと思いました。

そのとき、その風が、においや湿度までよく知っているはずの風が、今までとは全く違ったように感じ、僕はびっくりしました。

これまで、僕と奥さんは、春秋の気候のいい時期には、よく連れ立って公園にピクニックに出かけてきました。そこでこの日のような春の風を感じると、なぜかしら懐かしく感じたものです。つまり春や秋の好天は、自分史の中の、そしてたぶん幼い頃の、同じような好き日の記憶を思い起こさせる「よすが」というか、ノスタルジーをかき立てる記念品のような機能を担ってきたのだと思います。そしてそのノスタルジーには、もう遠い日に帰ることはできないんだ、という諦念がつねにない交ぜになってもいました。

それがこの日の風の感じ方は、全く違っていました。今までのように郷愁の念を誘うものではなく、今この瞬間のための全く新しいもの、まだこの風についてよく知らない、生まれたばかりの娘の、今この日のために吹いているんだなあ、というように感じられたのです。

この感覚の違いは圧倒的で、単純な都並をある意味うちのめしました。

「ああ、これから毎日見聞きする全てが、すでに素性を知り尽くした陳腐なものであるにもかかわらず、まったく新しい感覚を伴ってやってくるんだ。…なんてことだ、あの退屈で垢抜けないショッピング・モールさえ、新鮮味をもって見られるに違いない」

この感覚に含まれていたのは、ある意味畏怖とでもいうべき感覚でした。

ブログを更新しないうちに僕自身はまたひとつ歳をとり、村上春樹の短編で「人生の折り返し地点」と言われる35歳になったわけですが、35年間かけてやってきたことを、またいちからはじめるルーキーが誕生して、なんだか巨大な運動場のトラックを一周して戻ってきたような気持ちになりました。一周してきたところで、その新しいランナーと併走することになったわけです。

この新しいランナー、まだ足取りも覚束ないのですが、この選手と併走していくのが取り急ぎ僕の使命なんだなあ、とそんなふうに感じた、6月の朝でした。

以上、まずまずありきたりな人間に起こったまずまずありきたりな事件がもたらした、まずまずありきたりな衝撃について書いてみました。まあしょうがないよ。ありきたりなところから非凡な結果が出てくるわけがないよ。

追記:娘のブログ・ネームですが、僕が鰤彦、奥さんが鰆、なので、悩んだのですが(魚偏の名前は世田谷区の長谷川さんにたくさん使われていることもあり)、「めろちゃん」にします。別名銀むつ、西京焼にするとおいしい魚です。

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愛としんじつのハンバーガー祭

昨日のバレンタイン・デーは、我が家ではお客さんを招いての新年会だった。

二月も半ばになっていまさら新年会もないだろう、という向きには、旧暦の新年会ということで御理解いただきたい。いやいや、今年は太陰暦では2月18日が正月なので、まだ旧年中ではないか、といううるさ型には、もう旧暦の忘年会でも何でもいいのでとりあえず御理解いただきたい。

要は、もうすぐ京都の家を去るので、居るうちにお友達を招いてホーム・パーティーを、と思って夫婦で色々企画しており、昨日はその一回目だったのである。

この記念すべき一回目にお出でいただいたのは、このブログにはしばしば登場していただいているしっぽうさぎさんと、その御子息のパダワン少年。

このお二人を招いて盛大に執り行われたのは「ハンバーガー祭り」であった。

「ハンバーガー祭り」とは、要は、手巻き寿司パーティーのハンバーガー版である。すなわち、参加者は各々バンズを片手に、テーブルに並べられたハンバーグやベーコン、アボカド、チーズ(二種類)、トマト、オニオン、ズッキーニ、レタスなどから好みの具材を好き勝手に挟んで、ケチャップやマスタードを好きなだけかけてオリジナルのハンバーガーを製作し、思い思いにかぶりつくのである(下の画像参照)。

サイド・メニューもぬかりなく、奥さんが鯛のマリネとベビー・リーフのサラダを用意してくれたほか(これはパダワン少年には「不吉な味がする」と言って退けられた)、ドリンクはしっぽうさぎさんの御厚意で、コーラやスパークリング・ワインがたっぷりと用意された。

他には、ハンバーガーにはやっぱりフレンチ・フライがつきものだが、こればっかりはさすがに家ではおいしくできないので、ポテト・チップス(こちらもLightly SaltedとNew York Cheeseの二種類)で代用。でも、ルーブル美術館の隅っこにあるカフェ・マルリーのチーズバーガー(味もボリュームもばつぐんです)もポテチ添えだからこれでいいのだ。

これは自画自賛だがなかなかのアイデアで、四人で楽しくテーブル上をすっかり完食してしまった。バンズは8個用意したのだが、これも残さず平らげてしまった。はじめはベタにお鍋とか手巻き寿司とかを考えていたのだが、ある日天啓を受けてハンバーガー祭りにしてよかった。

びっくりしたのはパダワンくんで、ハンバーガーを二つまるまる食べてポテチも食べ、そのあと奥さんの用意したデザートのマロン・ケーキも、こぶりのものだったが三つ(!)完食していた。今まさに育ち盛り&食べ盛りなのであろう。昔見たTVCMで「130cmを超えたら食べ盛り」というのがあったが(それもハンバーグのCMだったような気がするなあ)、聞けばやっぱり今ちょうどそのくらいの身長ということだった。それにしても、30の声を聞いたおじさんにはびっくりするような食欲だった。

食後はパダワンくんが持ってきた花札をしたり(あらかじめいかさまで彼が勝つように仕組まれていました)、巨大トランプでババ抜きをしたり(これは真剣勝負でした)、「大人の科学」の投影式万華鏡で遊んだり、文字通り童心に帰って、とてもいい時間を過ごした。

なかでも、パダワンくん=小学二年生が「全部自分で組み立てた」(大したものです)と自慢の万華鏡を、彼の勧めにしたがってリヴィングを暗くして天井に投影して遊んだのは、非常に意義深い時間の過ごし方だった。

もちろん、万華鏡自体本当にきれいだったけれど、それよりもこのオモチャに夢中になっている少年の様子を観察する、というのが、まだ子供のいない僕にとっては新鮮な体験だったからである。天井の色とりどりの模様を見ているのもいいが、「この光景が彼の脳裏にはどんなふうに写っているのかな」と思いながら、パダワンくんのきらきらと(というよりは猫のようにらんらんと)輝く目を見ている方が、なかなか得がたい体験だった。

しかしこんなふうにして男子二人が隣の部屋で無邪気に遊んでいる間、奥さんとしっぽうさぎさんはダイニングで女同士の話に花を咲かせていた。ここにどこの家にも見られる男女の縮図があるような気もする。

追記:タイトルは、パダワンくんがうちのソファーを評して言った言葉、「これは愛と真実のベッドだ」からとりました。彼は昨夜、大人より先に食事を終えると、さっさとリヴィングに移動してソファーに横になっていたのですが、たしかに130cm間際のパダワンくんにはうちのソファーはちょうどいいベッドのようでした。それにしても、「愛と真実の…」とか「不吉な…」とか、子供がどっかで覚えてくるボキャブラリイっていうのは面白いなあ。

追記②:もしおうちで同様のことをなさる方がいらっしゃったら、ハンバーガーのパティ(ハンバーグ)は、焼く前はバンズ(パン)の1.2~1.5倍見当の大きさになるように成型されるのをオススメします。けっこう熱で縮みますので。

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クリスマスの買い物

これを書いているのは金曜日だが、水曜日のできごと。

長々と書き続けている論文仕事が一段落したので(1st Draftの完成。450枚くらい)、仕事帰りの奥さんといっしょに四条烏丸の大丸まで買い物に行く。

買い物リストは次の通り。

1)奥さんの友達、Iちゃんの出産(男の子)のお祝い

2)奥さんの友達、Kちゃんのお子さん(1歳、女の子)へのプレゼント(今度遊びに行くので)

3)寒くなってきたので鰤彦用手袋

4)その他クリスマスの買い物

クリスマスの時期に百貨店に来るのは、いくつになっても、資本主義社会に条件付けされているなあと思いつつも、やっぱりウキウキするものだなあ。

おまけに、上記のように近頃では僕も、満を持して、というか一億総晩婚時代の例に漏れず遅すぎる感すらあるのだが、プレゼントを贈る側の世代に入ってきた。

これまでは若者リーグのベテラン選手(今は戦力外ですが)として、ガールフレンド(今の奥さん)とイルミネーションを観に行ったり、気合の入ったプレゼントを贈り合ったり、レストランのディナーを予約したり、ホテルをとったりしてきた。バブリーでひかれそうだが全部本当にやっていたのだ。

でも今年は二人ともなんだかそこまでの気合はなくて、奥さんと「このお家でクリスマスは今年一回しかないし、うちでお祝いしようか」と話している。土台今からお店やホテルの予約もできないし。今年はこじんまりクリスマスに路線変更である。

その代わりに、いろんな人にプレゼントを贈るきっかけが今年はたくさんあって、そうか、二人以外の誰かにプレゼントを贈ることがクリスマスのメイン・アクティヴィティになりつつあるんだなあ、と実感もひとしおである。宇宙船地球号の新メンバーの何人かにプレゼントを贈れるのは、ベテラン乗組員の証であり誉れだと思う…とはいえ、まだまだ自分のプレゼントも欲しいですけど。

色々大丸の子供服&おもちゃのフロアを見て回って、結局買い物は以下の通り。

1)ベベの子供服&前かけのセット。クラシックでシンプルな感じのロンパース。

2)イタリアの子供用品専門ブランドSeviの引き車。Prodottog_351

子供のおもちゃなんて、何歳くらいにどういうものがいいのかもうひとつよく分からないのだけど(パッケージにだいたい対象年齢も書いてありますが)、売り子のお姉さんが「1歳くらいなら引き車がいいですよ」といったのでこれにする。車軸が曲げてあって、引っ張るとひょこひょこと動く仕組み。ここのブランドは、インターネットで調べるとけっこうな老舗というか大手のようだ。

3)色々悩んだけど、ラコステのニットのもの。Vfsh0081

カーキにオレンジのラインがいい感じ。画像では分かりづらいがワニさんのピンポイントも手首のところにちゃんと入っている。僕は人間としての器も小さいが手も小さいので、フリーサイズの手袋を買うと必ず小指と親指の先が余ってしまう。しかしこれはがまんするしかない。

この日は手袋なしで出かけて手がかじかんだので、帰りにさっそく着用。なかなかよい。

4)その他の買い物。Vfsh0077

こちらもイタリアのトイ・ブランドTrudiの、テディベア。ここのぬいぐるみは、大丸にワンコーナーあるのだが、レアな動物のぬいぐるみが多くて、いつも心を惹かれてしまう。コアラとかサイとかバッファローとかてんとう虫とかカエルとか、ふつうぬいぐるみにしないようなチョイスが普通にあるのだ。

でも今回は、クリスマスらしく赤いニット帽とマフラーをしたテディベア。クリスマスの飾り付け代わりに購入(春には引っ越すので今年はもうツリーを出さないでおこう、と奥さんと決め、そのかわりに細々としたものでクリスマスの飾り付けをすることにした。そのうちの補強要員としてこいつを連れてきた)。名前を「くまのすけ」と名づける。苗字は佐々木か。ちなみにイングリッシュ・ネームは「エリック・くまぷとん」。

そのほかの買い物。こんな感じです。

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