渋谷に2時、映画館が満席で
うれしいクリスマスの三連休。そこで、日ごろからそんなにきっちりと畳み込んでもいない羽をぐんぐんと伸ばす。休むのと遊ぶのは都並の得意分野である。
まず土曜日は、渋谷まで映画を観に出かけた。お目当ての作品は『バレエ・リュス ~踊る歓び、生きる歓び』。渋谷シネマライズXにて上映中である。
以前の記事でも書いたとおり、かつて都並は、縁あって兵庫県立芸術文化センターに所蔵の「薄井憲二バレエ・コレクション」の関係の仕事をしたことがあった。そのときの仕事はというと、同コレクションの専属キュレーターで舞踊研究家の女史のアシスタントだったのだが、その際に同女史は僕に「バレエ・リュス」の何たるかについて惜しみないレクチャーを授けてくれて(それも同女史のバレエ・リュスへの愛ゆえであったと今ではよくわかる)、それ以来、僕個人としても、芸術史に燦然と輝く芸術家たちが奇跡のコラボレーションを行ったこの類まれなるカンパニーに興味を持ち続けてきた。
それが、マイケル・ムーア以降、といっていいのだろうか、昨今のドキュメンタリー・ブームで(これは、教える側としては歓迎すべき傾向だと思っている。良質のドキュメンタリーのDVDは、講義のための材料としては最適だからだ)映画化されたという。これは観に行かなければならない(もっとも、都並がはじめてこの映画の存在を知ったのは、奥さんの買い物に付き合って出かけた、「ドレステリア」の店内のポスターだった)。
ということで、渋谷で2時の回に間に合うためには家の前の駅を12時に出なければいけない、という悲しいスケジュールだったが、いそいそと支度して出かけた。
またこの日は、帰省中の奥さんが帰ってくる日でもあり、ついでに彼女を東京駅まで迎えに行くことにした。
しかしお目当ての渋谷シネマライズXは(なんだか子供向けTV番組のヒーローみたいな名前だ)こちらの予想に反して混んでいて、着いた時には2時の回は満席売り切れだった。いや、正確に言うと、券売の窓口で目の前で最後の一枚が売り切れてしまったのだった。この映画館、もとより38席しかないミニミニシアターなのだが、まさかバレエの映画が売り切れるとは思わなかったので困ってしまった。
しかしよく考えれば、バレエのファンはもとより、実演家の方が東京には日本でいちばん多くいらっしゃるわけだから、このような事態は予測してしかるべきだったのだ。
しかたがないので都並は、気持ちの上では半分拗ねながら、童謡の中の黒ヤギさんみたいに実直に奥さんにメールを書いて、「二時間後の回見させて」とお願いをした。するとちょうど奥さんはそのとき新幹線に乗る前だったので快諾してくれた。持つべきものは理解のある奥さんである。
そんなわけで、二時間ほど渋谷で時間をつぶす必要が生じたのだが、しかしまあ、渋谷というところは、暇をつぶすのには最適の場所ではある。ペトロパブロフスクカムチャッキーで二週間後の船を待つ、というのとはわけが違う(あたりまえですね)。東急ハンズもあり、ロフトもあり(都並はこういうお店が大好きである)、スターバックスもあり、HMVもあり、おまけにパルコの地下にはなかなか大きな、美術系の充実した書店もある。
これらの店で雑誌やら村上春樹の新刊やら入浴剤(このクリスマスの休暇に毎日日替わりで違う湯に入ってやろうという安易な考えに基づく)やらつまらないものを買いまわっているうちにあっという間に二時間が過ぎた。
ようやくシネマライズXへ。ここは恥ずかしながら初めて来たのだが、なかなかに面白いハコである。38席しかないのに二階席があり、二階は少し見下ろすかたち、相対的に一階はやや見上げるかたちになる。多くの常連とおぼしきお客さんたちは二階席に行ったのだが、都並は一階が好みなので一階席の真ん中に陣取った。
もっと興味深かったのは、壁のサインである。京都のパン屋「プチ・メック」にも同じ趣向があるが、コンクリートの壁を埋め尽くすように、ここを訪れた著名人(プチ・メックは無名人だけど)のメッセージとサインが書き込まれているのである。
この中から読み取れるのを拾ってみただけでも、ペドロ・アルモドバル、エミール・クストリッツァ、ガスパー・ノエ、ハーモニー・コリンといった錚々たる名が並んでいる。こういう人たちが来る場所にいるんだなあ、と思うと、僕みたいな田舎ものは感激してしまう。
映画を観終わって(内容については別記事で)7時前。そのまま東京駅に向かう。7時半にグランスタで奥さんと合流、その足でまたもやTOKIAビルの「きじ」へ。
「きじ」では、前回来たときに食べておいしかった「ごちゃ焼き」(シーフードときのこのバター炒めと焼き海苔)と焼きそば、それから初挑戦の「ポテトコーン」を頼む。「ポテトコーン」は「ソースと塩どちらになさいますか」と聞かれたので、「塩味のお好み焼きなんて面白そう」と塩味にしてみる。
この塩味のポテトコーンは、なかなか風変わりでおいしかった。生地のおいしくないお店で塩味のお好み焼きなんて食べても成立しないと思うが、ここのはちゃんと成立していた。今回みたいに三品頼んだときは、一品味の変わったものを頼む、という意味でもありだと思う。興味のある人はぜひ。
食事を終わって、奥さんとクリスマスシーズンのイルミネーションが設置されている仲通へ向かってみる。しかしあいにくの雨。とても寒かったので、愛機のロモでちゃちゃっと写真を撮って退散する。
そのほか、丸ビル、新丸ビルのイルミネーションなども見て、帰宅。
ところが帰りの電車が人身事故で一時間以上遅れたのだった。おかげで帰り着いたのは午前様だった。やれやれ。



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