ところ変われば
そろそろ移住して二年になる北関東というところは、小麦の生産がさかんなところである。
以前の記事でも紹介したように、冷たい麺をねぎやしいたけや豚肉を入れて煮込んだめんつゆでいただく、この地方独特のスタイルの武蔵野うどん、という料理があって、それはそれで、関西人の思い描くうどんとはかなり違うけれども、けっこういける。
スーパーにならぶ製品のレヴェルでも、気に入っている銘柄の、地元の粉(地粉という)を使ったうどんがあって、やや浅黒いけれどもコシが非常にしっかりして気に入っている。
ということで、大阪に十余年住んだ似非大阪人にとっても、「こなもん」文化全般に対する飢餓を覚えるということはない。
が、その北関東「こなもん」文化の中でも、大阪人(似非を含む)には受け入れがたいものがある。
それは「ふらい」である。詳しくはリンク先のウィキペディアを参照してもらうといいのだが、「ふらい」とは何か?と聞かれれば、似非大阪人に言わせれば「キャベツの入っていないやっすいお好み焼き」「お好み焼き味のチヂミ」「壱銭洋食の上等なやつ(奥さん談)」としか言いようがない、主に埼玉県行田市~熊谷市地域のみで食べられているという、独特のB級グルメである。
この文章を読んだ大方の大阪人(一部広島人を含む)の皆様が即座に同意してくださるように、我々夫婦も初めてその存在を知ったときは「そんなものはもんじゃ焼きと一緒で関東のゲテモノに違いあるまい」と一笑に付して顧みなかった。そこには異文化に対する恐怖の念も少し含まれていたと思う。
しかしながら、この「ふらい」を拒絶したために、我々夫婦はしばしば、関西人特有の「お好み焼き食べたい」という「特殊飢餓状態」の回避策に悩まされることになった。「こなもん」自体に飢えることはないが、「お好み焼き」となるとこの地方は極度に手薄なのだ。
では具体的にどうして凌いでいたかというと、あまりに流行っているのでもう名前は出さないが、丸の内の某名店まで足を伸ばしていたのである。しかもそこで一時間以上行列に並んで食べてきたのである。
ここで小さな声で言いたいが、あの某名店に三人ぐらいで訪れて、お酒を飲みながらなんやかんや頼んで、結局食べ切れなくて残して出て行くOLさんたちには、あの味が我々にとってのコーシャーなのだということをどうか分かってもらいたい。あなたたちは興味本位で食べているかもしれないが、我々には死活問題なのだ。
閑話休題。ともかくそのように厳格なこなもん教徒である我々であるが、この日曜日、不信心の罰当たりとは思いつつも、ふらい屋さんに入ってみた。
そのお店は「慈げん」。熊谷市の地方ローカル百貨店「八木橋」の裏手にあるお店である。たまたま「八木橋」のデパ地下グルメに用があったので、そのついでの訪問である。
結論から言えば、この「慈げん」の「ふらい」が、美味しかったのである。食べたのは「野菜紅生姜ふらい」だったが、味は先ほども述べたように、たこ焼きがそのまま薄くなって、チヂミになったようなものを想像してもらうと分かりやすい。
生地がくちくち、もちもちとしていて、ソースもしつこくなくて食べやすい。異教徒の食べ物とはいえ、我々こなもん教徒にもこれなら食べられる。ということで、我々は即座にこれまでの「ふらい」に対する非礼を詫びたのであった。
ちなみにこのお店、15時までは出汁と粉にこだわった手打ちうどんが食べられるというので、そちらも頼んでみた。
頼んだのは「ねぎ醤油の和えうどん」。これが、メニューに謳ってあるとおり、もちもちとした焼きうどんのような、醤油ベースのカルボナーラのような絶品であった。聖地讃岐巡礼も果たした人間が言うのだから間違いない。あくまで「ふらい」がメインで、サイドメニュー的な意識で頼んだうどんであったが、実はこっちのほうが瞠目するくらい美味しかった。
メニューを見るとこのお店、他にも「クリームチーズうどん」「うどんの豆乳鍋味噌風味」「ミルクカレーうどん」「トマトスープうどん」など野心的なメニューがならんでいる(以上うろ覚えですので、正確な名称は細部違うかもしれません)。
これはぜひとも再来して試してみたい、と奥さんと意思を確認しあったのであった。
熊谷市の「慈げん」、おいしいです。興味のある人はぜひ(丸の内の某店はこれ以上流行るといやなので名前を伏せるけれど、この地方のお店は、国道沿いでも流行らないとすぐつぶれてしまう苛烈な環境にあるので、ぜひとも繁盛していただきたいと思います)。































































































































































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