映像博物館でジェダイ時代のマスターに再会する
NYといえば、西海岸とならぶアメリカ映画の本拠地のひとつである。そのNYに「映像博物館(Museum of the Moving Image)」があるというので、趣味と実益をかねて行ってきた。
けれども、きわめて率直にいえば、このミュージアムには少し肩透かしをくらうところもあった。まず施設自体はクイーンズの外れに位置し、アクセスも決して良くない。周辺の街の雰囲気も、摩天楼が空を覆い隠すマンハッタンと比べると、建物も低く、のんびりとしたかんじである。
参考までに、画像を添えておく。これは、見学を終えてから休憩に入ったスターバックスの窓からの風景を、愛機LOMO LC-A+で撮ったものである。全体に、ゆっくりとした時間が流れているのが分かってもらえると思う。
もう一枚。どうでもいいことだけど、この赤いシャツのおじさんが通りかかったタイミングと位置が偶然ながらばっちりで、おかげでなんとなく『ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブ』みたいな雰囲気すら漂っている。
ちなみにうちの奥さんは、マンハッタンの気ぜわしさには神経が疲れるらしく、クイーンズの方がのんびりできて気に入っていたみたいである。
こういうところにあるのだから、マンハッタンのキラ星のようなミュージアムたちと比べるとどうにも見劣りがしてしまう。
館内に入った時のゆるさも、それに追い討ちをかけている。うまく説明できないのだけれど、建物のあちこちの通路や扉が開放されていて、学校の校舎のような風通しのよさがある。受付のおじさんも警備のおじさんもゆるい感じで「あ、どうぞいらっしゃい」というかんじで迎えてくれる。MoMAの入り口の手荷物検査とか、ああいう厳しい感じはない。
どうにも、全体に「行政の気まぐれで冷や飯を食わされている施設」という感じが否めないのである。
店内の展示も好きに写真を撮っていい、とおじさんは言う(ただし、フラッシュはダメ)。こういうのは、日本の厳しい施設に慣れた身としては「そんなのでいいのかな」と思ってしまわなくもない。けれども、授業等での資料に使えるので、そういう意味ではありがたい。さっそく、専属カメラマン(奥さんのこと)に命じて「あれ撮っといて、これ撮っといて、あ、これはアップで、この字が読めるように」などと写真を取りまくる。
これなんかは、ジガ・ヴェルトフが『カメラを持っていた男』で使っていたカメラを彷彿とさせる、かなり初期の撮影機である。
こちらはヴァイタフォン。トーキー最初期の『ジャズ・シンガー』なんかに使われた装置だ。当時はまだ、フィルムの帯の端に磁気テープでサウンドトラックを貼り付けるという技術がなかったので、レコードを用いている。その再生速度をフィルムと同期させて、音のシンクロを得るのである。こういうものの写真が取れるのはありがたい。
話は前後するけれど、常設展に入ってすぐのところには、サウンドのシンクロやアフレコ、クロマキーなどを体験できる設備もある。これらは子供に人気だ。僕も、オードリー・ヘップバーンの『マイ・フェア・レディ』での「スペインでは雨は主に平野に留まる」というせりふをアフレコさせてもらって楽しんだ。
撮影・映写機材のみならず、小道具も多く展示してある。複製技術時代の芸術の最たるものである映画に対して、こういう「一点もの」のアウラを求めるというのはなんとなく倒錯している感じもあるけれど、こういうものがないとミュージアムとしてはつまらない。
上の画像は、分かる人はすぐ分かる(?)『タクシー・ドライバー』のトラヴィス・ビックル(ロバート・デ=ニーロ)のヅラ。言っちゃ悪いけど、こんなもの、いくらでも似たものを用意できるので、本当か?という気がしなくもないけど。
次はマーロン・ブランドのライフ・マスクと、『ゴッド・ファーザー』のときのオールデージ・メイクアップ用入れ歯。一説にはブランドは、コルレオーネのたるんだ頬を表現するために口にチーズを入れていたというけれど、こういう入れ歯も使っていたんですね。
ちなみにライフ・マスクはこのほかにもクリストファー・ウォーケンとかアル・パチーノとかたくさん用意されていて(こうしてみると、今挙げた人たちはかなりNY寄りの人選ですね)、とりあえず写真を撮ってしまう。よくよく考えてみれば、何がありがたいのかと聞かれると返答につまるものけれど。
これは有名ですね。「キリストの力が汝を屈服させる!」のあの人です。うちの奥さんはこの人と笑顔でツー・ショット記念写真を撮っていました。
この人はいちおうガラスケースに守られて鎮座ましましていたんだけれど、『ブレード・ランナー』のタイレル社の外観ミニチュアなんかは、まるで高校生の文化祭みたいに何気なくぼんっと、捨て置かれたように展示されていて、この辺もやる気のなさを感じる。
こんな感じです。近寄ってみるとさほど凝っていない簡単な工作であることがわかり、それが映像の効果であの雰囲気をかもし出していたのだな、ということがわかるという、そういう意味では面白い。もちろん、小理屈はさておき、コアなファンにはたまらないものがあるんだろうけど、僕はできればデッカード・ブラスターとかの方が見たかったかな。
それよりも僕自身の思い入れとして嬉しかったのはこれ。チューイの頭部です。かつて現役のジェダイだった時いっしょに戦った思い出がよみがえる。さらに、ジェダイ・マスターのあの方とも再会できたのは感激もひとしおでした。ダコバでの厳しい修業が思いこされます(記憶がよみがえってばかりですな)。
嬉しくなったので思わず「ははー。師匠ー」というかんじで跪いているショットを撮ってみた。こういうことをしていても誰も何も言わない。そういうゆるーいミュージアムなのである、ここは。
「ははー。精進しております」
「いいか、やるか、やらないか、それだけなのじゃぞ。やってみる、というのはないのじゃぞ(Do, or do not. There is no try)」
「ははー。肝に銘じております」
こんなかんじでゆっくりと見て回っても2時間はかからない。この点、MoMAやメトロポリタン、ホイットニーなんかのスーパー・ミュージアムと比べると雲泥の差がある。
それでも、日本にいたのでは観ることができないものがたくさんあるので、映画研究の徒は行っても損はないのではないだろうか。
難をいえば、ついでに周囲で観るものが何にもないのと(フラッシング・メドウズ・コロナ・パークまで歩くなら別ですが)、最寄の地下鉄の駅がローカル(各停)しか停まらないのですごくややこしい、ということがあるけれど。
最後にクイズです。この美青年は映画史上最も有名なコメディ俳優なのですが、誰でしょうか。答えは、画像をクリックすると書いてあります。そんなことしなくても顔を見ればすぐわかりますよね。
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コメント
おかえりなさい、マスター&賢夫人!
この度は色々お世話になり、誠に有難うございました!
しかし、いいなぁ…師匠との再会…。
漆黒の髪のルークに見えますよ。
投稿: lipin55 | 2007年9月30日 (日) 10時00分
ごぶさたしております。
いやはや、NYは大変なところでした。なんというか、とっても移り気な、ミーハーな街だな、というのが素直な感想です。
お褒めの言葉ありがとうございます。
しかしながらルーク・スカイウォーカーほどの立派な血筋ではございませんで…父親はダークサイドというよりノーサイドです。
それでも師匠に謁見できたのは嬉しかったですねえ…世界って繋がっているんだなあと思いました。
投稿: 鰤彦 | 2007年9月30日 (日) 17時06分